第2回「何でこんなに面白い物を見逃していたんだ?」 テトリス ザ・グランドマスター2
ジ・アブソリュート・プラス
(AC/2000年12月)
開発・発売:アリカ
プレイ状況:初心者(ランク1程度)
コラム本文(執筆日:2004年12月28日)
 「何でこんなに面白い物を見逃していたんだ?」
 このゲームの魅力に気づきハマった人はこの台詞を思い浮かばずにはいられない。まさに盲点。こだわりを持って作れば、シンプルなゲームがこんなにも面白くなるものなのか。この台詞は、このゲームにこそ相応しい。

  【テトリス】
 旧ソ連のアレクセイ・パジトノフ博士が知的教育を目的に開発したソフトウェア。画面上部から落ちてくる7種類のブロックを積み上げていき、横一列が揃うとそのラインが消えて得点が加算される。最上段までブロックが詰み上がるとゲームオーバー。 その分かりやすいプレイ方法で、1990年代前半に世界的に大ヒットした。
(はてなダイアリー「テトリス」の項目より)

 てなわけで、キーチェーン・家庭用ゲーム機・携帯アプリ等、機種を問わず移植され、それぞれヒットしてきましたテトリス。そんな中、1998年8月にアーケードゲームとして稼動した「テトリス ザ・グランドマスター」(以下TGM)は、90年代初め頃(?)に稼動して好評を得たセガテトリスの流れを汲んでおり、さらなる工夫を施すことによりヒットしました。
 普通のテトリスとの大きな違いは、本来死なない限り永遠に続くテトリスに限度を設けたことです。レベル制というやつで、マックスはレベル999。1個落とすごとにレベル1・ライン揃えて消すとその段の数だけレベル上昇という仕様にすることで、タイムアタックの要素を持ち込むことに成功しました。
 タイムアタックの世界を助長したのは最高速度の上昇もあります。初心者モード以外のモードでは後半、20G(一瞬で20段落ちる=最下段まで落ちる)という恐ろしさ。この段階になると「ミノが空中にいる間に操作する」という概念は消えて、積みあがったブロックの上に落ちたブロックを横に滑らせていくという世界になります。この世界では普通の右端空けて棒待ち(基本的なテトリス待ち)だけでは到底通用せず、真ん中をピラミッド状に積み上げる(横に移動できる幅を増やす)というテクまで必要とされます。また積みあがったブロックの凹凸が横移動できるかの可否を決めるため注意しなければならなくなります。
 他にも段級位認定・先行回転入力等、様々な特徴付けもされました。こういった普通のテトリスにはない戦術性と、計算しつくされたスピード上昇とテンポによる興奮感・酩酊感がプレイヤーを魅了し、これが無い他のテトリスは大嫌いという熱狂的信者をも生み出しました。
 しかし、上級者の手により9・8・7……2・1・S1・S2……S9と上昇していくランクの最高位、「GM」(グランドマスター)が出され、完全にプレイしつくされました。まぁ今でもタイムアタック等は行われていますし、初心者の練習用としても愛用されています。かく言う自分も結構やってます。

 そんな中、発売されたのが表題作「テトリス ザ・グランドマスター2 ジ・アブソリュート・プラス」(以下TAP)。本当はTAというバージョンが先に出ていたのですが、今ではTAPが普通なのでTAはカット。
 さてさてTGM→TAPの一番の変更点としては多種多様なモード追加が挙げられます。初心者向けと上級者のスコア&タイムアタックが熱いNORMAL。メインモードでありランク認定のあるMASTER。そして地獄の20GからスタートするDEATH。
 またプレイ面では上キーで即時落下(一番下まで落下)・接地時に下キーで接着(テトリミノの位置が確定=操作不能→次のテトリミノが落ちてくる)が追加され細かいプレイが可能になりました。
 ランクシステムは前作以上にタイム重視の方向になり、前作では基本的に一定スコア以上の条件達成式だったのですが、今作はタイムが絡んだ上に裏で細かい計算がされており、目標点の表示がなくなってしまいました。基準の推測もほとんど不可能という有様で、まさに謎に包まれています。
 速度面については20Gが出てしまったので、もう何も無いだろうと思われましたが、まだありました。DEATH等では20G以降もまだ短くなります。落下速度が縮まったのにまだ早くなる要素があるのかという感じですが、今度は落下後に固定するまでの時間が短くなっていきます。もう無駄なことは一切できない世界といった所でしょうか。しかし、流石にこれを体感するのは20Gに耐えられる腕を持つプレイヤーに限られるので、そこまで革新的とまではいきませんが。
 しかし今作は本当に「謎」が多いです。「2年はプレイしてもらえるように設計した」と開発者代表の三原氏は語っていますが、ちょうど4年になろうという現在ですら、多くの謎が残されています。前作は最高ランク「GM」を取る人間が結構出てしまい、スタッフ側がやり尽されたことを認める状況です。それに対して今作ではS9以上となると「緑m」・「緑Gm」(全国で十数人程度)・「橙Gm」(全国で5人?)が確認されていますが、まだ隠されたランクが5つ以上あったり(しかも人間の手で出せることは開発元が保証している)、前作にもあった、スタッフロール中もプレイできるというオマケパートまでもがランクに絡んでくることも分かっており、まだまだ超人類vsTAPの戦いは終わりそうにもありません。
 
 とまぁ締めくくりたいのですが、なんと2005年頭に3が発売決定。「テトリス ザ・グランドマスター3 テラーインスティンクト」だそうで。ロケテスト段階では「m」にも数字が付いたり、NEXTNEXT欄(テトリミノが次の次まで分かる)やHOLD(落下中のテトリミノと保存しておいたテトリミノが交換できる機能)が導入されるらしく、謎も満載ということでさらに白熱した高度な戦いになりそうです。

 纏めてみたんですが、これだとただの紹介文なので、自分の思う所でも。20Gの世界の存在を知ったとき本当に衝撃的でした。20Gでなくても、速度上昇とか、その他細かいテンポ調整はまさに職人芸。圧倒的なスピードと、それに伴うプレイ中の陶酔感はTGMシリーズしかありません。下手でも下手なりに楽しく悶絶できる。一度これを知ってしまうと他のテトリスができませんね。マジで。ポンポンやれてしまうってのがアーケードゲーム的に大きいと思います。
 さらに999をマックスとする独特のレベル制やそれに伴う上限があることも嬉しいです。今までやったキーチェーンのや携帯アプリでは最高速度でも空中で操作可能だったため、普通に持久力勝負になってしまいます。それが原因で面倒くさくなって止めていったという経緯があったので、上限ありというのは(たとえ到達できなくても)精神的に大変ありがたいですね。
 それから各種の謎というかそれを通して見えてくるプレイヤーvs開発元の構図について。普通はこういう構図は良くないのですが、ここまで良い関係なのは大変珍しいと思います。挑戦者・出題者として割り切られてるという辺りが。しかも現状、開発元の方が勝っちゃってる。同じ構図が見られるのはこれとCAVEのシューティングゲームぐらいなものでしょうね。音ゲーの発狂したとしか思えない譜面にも通じる物がありますが、あっちはクリア者だけなら結構いるので、プレイヤー側が勝ってるという感じですし。誰も出してない未知の領域があるってのは大きくて、そこらへんにも惹かれます。
 だらだらとここまで書いてきましたが、結論としては「一度やってみやがって下さい」ということで。



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