第7回「王道は進化する」 ドラゴンクエスト8
~空と海と大地と呪われし姫君~
(PS2/2004年11月27日)
開発:スクウェア・エニックス
プレイ状況:完全クリア
(PAR使用/竜神の試練終了)
あらすじ
いにしえの昔から、邪悪な力を持つと語り継がれてきた伝説の杖。
その杖を封印していた城に、ドルマゲスという道化師が現れ、
杖の封印を解き放ってしまいます。
目覚めた邪悪な力の呪いによって、城の時は止まり、
国王や姫も姿をかえられてしまいました。
ただひとり呪いから逃れたあなたは、
城や国王たちを救うための冒険に旅立つのです。

コラム本文(執筆日:2006年5月5日)
 PS2ソフト、しかもプレイしたのは今年の3月ってこともあり、明らかに「思い出」ではないんですが、ドラクエシリーズとしてはあまりにも革命的で衝撃を受けたので、今回取り上げさせていただく次第です。
 いやね、もう発売から1年以上経ってるし散々各所で書き尽くされてると思うんで、今になって書くべきことも少ないとも思うんですが、DQ8はとんでもないことをやってのけました。「古い物と新しい物をじっくりと検討して摺り合わせた結果、良くも悪くも旧来からは変わっているのに、プレイヤーに『進化したDQ』を実感させた」のです。とんでもないことですよ。

 特に印象深かったのが、「フィールドマップと街の縮尺が同じでありながら、世界の広さを感じた」こと。
 今までは「街で20歩歩く」のと「フィールドマップで20歩歩く」のでは「距離の扱いが違う」というのがゲームにおいて当たり前でした。SFCのRPGだと、街の中じゃせいぜい20メートルそこらみたいな扱いですが、ワールドマップだったらキロ単位みたいな扱いだったりしてね。(笑) しかも街の中ですら実際の世界の尺度で考えるとおかしい部分が多いですから、それぞれデフォルメ化しており、その程度が違うっていうのが、プレイヤーと開発者の間の「お約束」でした。
 PS時代に入り描写能力が上がると、自然と世界も広がり、そのデフォルメ化の度合いもマシになりました。特に街の中は実際の世界の尺度に大分近くなりました。FF8の街とかはすごい顕著ですね。
 しかしPS2に入り、SO3やFF10あたりが慣習を打ち破り、ある程度のデフォルメ化がありながらも、今まで差がかなり激しかった街とフィールドマップをほぼ同じ縮尺で描くことに成功しました。ただこの時点ではまだ問題も多く、フィールドマップがやたらと狭く、無駄な所にも行けず、1本道になってしまいました。さらにどちらも高速移動手段(飛空挺とか)を世界地図等で誤魔化したりしたので「世界のごく一部しか見れない・描写していない」こととなり、厳しい批判を浴びました。個人的にはこの時点で革命的なことであり、批判するのはどうかと思いますけどね。確かに問題はかなり多いですが、後のゲームへ繋がっていくのは明らかであり、試金石ということで相当評価してます。
 そしてDQ8。ついに世界の端から端まで全部同じ縮尺で描写することに成功しました。データ量の関係で街とかに入る時は各々ローディングしてますが、普通に道沿いの家程度ならば別口の読み込みなしでフィールドマップと纏めて読み込んで描写する等、その技術には開いた口が塞がらないですね。
 個人的な妄想で恐縮ですが、去年の後半からなんとなく「ずっと長い道があって、ゴールも分かってて、そこをのんびり辿っていくRPG」ってのを考えてたんですよ。まぁ大学の授業で「人類において旅の始まりは、宗教における『巡礼』ではないか」みたいな話を数回にわたって聞いたからなんですけど。そっからイメージ膨らませて、シルクロード辺りのイメージで延々とゴールに向かって旅をしていくってのを考えてたんですが、近作にはそのイメージを多少具現化してくれたような気がします。
 というのも、今作では移動時間が明らかに「旅をさせる」というイメージの影響を受けてます。キラーパンサーの存在もそうだし、「まだ着かないのか。そろそろだるいなー」と思った辺りで近くに教会があったのには噴いた。ホント、この調整具合は凄いですね。

 その他にも特筆すべきことはありますが、とてもじゃありませんが書ききれないし、言葉も思いつかないです。ですが、良くも悪くも「まだ未完である」と言えると思います。
 特にバランス面においてはまだまだ調整のしようがあると思います。これだけ新要素入れてこのバランスも相当なもんだとは思いますが。テンション強すぎとか、メインキャラ4人しかいないのにモンスター仲間にできないのが違和感あったり(バランス的には問題ないと思いますが)、メインキャラでもククールが微妙なのは周知のこととして、ゼシカが明らかに強すぎたり、主人公が全体攻撃技多すぎたりとか。戦闘面ばっかりでアレですが。
 展開面では「ラスダンの最深部でも決着がつかない」とか、イベント戦闘チックなの(ラスボス第1形態のバリア解除)をやるとかは結構お約束破りだったと思うんですが、ちょっと微妙かなと。形態変化しなかったのは偉いが、まぁラスダン最深部のと分割しただけって話だしね。後、相変わらずラスボスの存在感薄い。中ボスがやたら目立って実はその裏に黒幕が……ってのはそろそろ止めてもいいんじゃないかと。

 なんだかんだ語ったわけですけど、ここまでスタッフ陣の情熱と技術に感動したソフトはちょっと見当たらないです。DQ7の悪評聞いて完全スルーした自分が恥ずかしい。DQ9はまぁPS3でほぼ確定だとは思いますが、今回のように古きも新しきも取り入れて、己の王道を更に突き進んで欲しいですね。



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